今日は冷たい雨。一日中。最高気温も 6 ℃ とか? それくらい。
【目次】
読書会に参加
19 時から地元の大型書店で開催されている、読書会に参加。
読書会の内容は、参加者それぞれが自分の紹介したい本を 5 分で紹介し、投票でその日の会でいちばん読みたいと思った本を決定する、というもの。
今回で私の参加は 2 回目。
前回は初参加だったのですが、私が紹介した本が「その日の会で参加者がいちばん読みたいと思った本」に選ばれました。
勝ち負けとかでは無いのですが、選ばれると嬉しいものですね。
今回も私は、誰かにオススメしたい本をちゃんと考えて選びました。
川原繁人『言語学的ラップの世界』
私が選んだのは川原繁人『言語学的ラップの世界』(東京書籍、2023)。
選んだ理由としては、いくつかあって、前回は哲学の本を選んだんですね。はじめての参加だったということで、自分の1番好きなジャンルを紹介したいと思い、哲学の本を紹介しました。
今回は2回目の参加ということで、哲学の次に好きなジャンルの本を選びたいと思いました。ですので音楽ですね。
そして、今年最後の読書会ということで、今年読んだ本の中で、印象深かったものを選びました。今年私が読んだ音楽の本の中で、印象深かった本ですね。さらに、今年発売されたものに限定もしました。
それから、人に勧められるものです。読みやすい本、ということですね。
あまりガチガチな難解な専門書を勧めて仕方がないと思い。
といった以上の理由から、総合的に判断して、『言語学的ラップの世界』を読書会で薦めることにしました。
そして私が読書会の中で、お話ししたのはだいたい次の通り。
上述の、なぜこの本を選んだのか、その理由はまず初めに話しました。
それから、タイトルの解説。言語学とは何か、それからラップとは何か、ですね。
言語学とは?
この辺はかなり私の言葉を入れました。まず言語学というと、私にとってまず初めに思い浮かぶのはノーム・チョムスキーなんですね。
生成文法という考え方がありますが、これは、あらゆる言語活動には何か、基礎となる普遍的な法則があって、それについての研究。私はこれを、言語学の演繹的な側面だと思っています。
それから、現実の個別具体的な言語についてそれらの特徴の研究。中国語とか英語とか日本語とか、そういった言語のそれらの特徴についての研究ですね。私はこれを、言語学の帰納的な側面だと思っています。
この帰納的な言語学の対象は、英語とか日本語とかそういった国や地域別の言語だけではなく、もちろん方言も含まれるし、それから若者言葉であるとか、キャラクター名や商品名に採用されやすい音についての研究であるとか。そういったものも含まれるわけですね。
ですので、言語学的なラップの研究というのは、帰納的な言語学の領野になります。
ラップとは?
それで、ラップと言うのはどういうものなのかと言うと、これも私の解釈ですけど、リズムに乗ってしゃべる音楽活動だと。私はそういうふうに思っています。
ただ、ラップをしている人たち、ラッパーたちが自分たちの音楽活動のアイデンティティーとして持っているのは、単にリズムに乗ってしゃべることだけではありません。ラッパーたちがラップをするとき、単にリズムを乗ってしゃべるだけではなく韻を踏みます。
ラッパーたちは自らの音楽活動のアイデンティティーとして、韻を踏むことを強く持っているのです。
韻とは?
では韻とは何か。これも、最も広い意味で説明すると、ある言語活動に対して恣意的に法則性を与えるということではないでしょうか。特に、似ている部分を与える、ということだと私は考えています。
これはどういうことかと言うと、例えばミッキー・マウスやミニー・マウス、といったとき、そは韻を踏んでいます。
ミッキーはネズミ = mouse で、mouse は m から始まる単語ですね。そして、ミッキーもミニーも、m から始まる名前です。
ミッキーもミニーも、「m」で韻を踏んでいるわけです。
同じように、ドナルド・ダック、デイジー・ダックは、「d」で韻を踏んでいます。
プルートとかグーフィーとか言われたら知りませんが。
日本語のラップにおける韻の特徴
さて、ラップはではどこで韻を踏んでいるのかと言うと、リズム的な区切りの末です (=脚韻)。
リズム的な区切りの末で、母音を揃えることで、韻を踏んでいます。
これはもうすでによく知られた事実ですので、もういちいち具体例は出しません。
『言語学的ラップの世界』の研究対象は、ラップ、特に日本語ラップにおける韻なのですが、『言語学的ラップの世界』の面白いところは、韻を踏む = 単に母音をを揃える、で終わらないところです。
『言語学的ラップの世界』によると、ラップにおいてきれいに韻を踏んでいる場合、母音だけでなく、子音も揃っています。
子音も母音も揃っていたら、それは聴覚上は全く同じ言葉なのではないか、という疑問が起こります。
そこで生かされるのが言語学的知見です。
言語学的によると、子音はいくつかのグループに分けることができます。
どのようなグループがあるかは、詳しくは本を読んでもらいたいのですが。
『言語学的ラップの世界』によれば、「きれいに踏まれている韻」は、母音と、子音グループが同じなのです。
しかしこれだけだと、「それはあなたがたまたま見つけたことですよね?」、つまり「それはあなたの考えですよね?」「そういうデータってあるんですか?」と某人のような反論をされかねません。
韻をデータ解析
『言語学的ラップの世界』が読むべき本である理由はここにあって、ちゃんと筆者の考え方に対してデータが示されているわけですね。しかもそのデータも単に示しているだけではなく、統計解析がされている。
つまり、筆者の考えに基づいて、100 曲が調査され、調査に基づいてXY平面上に散布図をプロットして、その散布図に対して最小二乗法 で直線を引き、ちゃんと相関係数やらないやろを算出しているわけです。
歌詞論の本で、ここまでデータ解析がされている例は見たことがありませんでした。
ちゃんとデータ収集そして統計的手法に基づくデータ解析がされることによって、単なる筆者の考えではなく、学的な説へ昇華されているわけです。きれいに韻が踏まれているとき、母音だけではなく、子音グループも揃っている、という説が。
難しそう? でもとても読みやすい
こういうふうに述べると、難しそうな本に思えるのですが、確かに、韻のデータ解析のところはけっこう難しいと思うのですが、その他は、かなりフランクな文体で、しかもラッパーのインタビューや、日本語ラップの簡単な歴史なども紹介されてます。ですので、全体的にとても読みやすい本ですね。
万葉集と日本語ラップ
この本の面白いところは、他にもたくさんあるのですが、あともう 1点。万葉集でも日本語ラップと同じような韻を踏んでいる例が紹介されています。
つまり日本語ラップの韻の踏み方は、突然変異的なものではなく、万葉集から続く伝統的な手法だったのです。
日本語ラップの現在の印の踏み方の原型を作ったのは、K DUB SHINE だと言われていますが、K DUB SHINE は万葉集を参考にしたわけではないと思います。
しかし、きれいに韻を踏むことについて言語学的に考察した結果、日本語ラップの韻の踏み方と、万葉集の韻の踏み方に共通点が見出された、というのが非常に興味深かったですね。
大田ステファニー歓人の受賞スピーチにおける詩
最後にもう一つだけ。
日本語ラップ的な韻の踏み方をする詩の例として、個人的に最近とても興味深かったのが、2023年のすばる文学賞を受賞した、大田ステファニー歓人の受賞スピーチの中で披露された詩です。
太田が披露した姿は、ナチュラルに韻が踏まれていて、私が中学校の教科書などで読んだ、日本語の韻が踏まれていない詩に比べると、かなり印象が違い、とても感銘を受けました。日本語の詩の表現は現在、こういった形まで進化しているのだな、と大変驚きましたね。
というような説明を読書会ではしました。
読書会参加メンバーさんの中には、興味深く私の話を聞いてくれる方もいて、紹介しがいがありました。
読書会が終わって、投票の結果、私が紹介した本が今回の「最も読みたい本」に選ばれたわけではなかったのですが、私の本に投票してくれた人もいたようです。ありがたいですね。
中小企業診断士の資格試験対策
読書会の後は、勉強。中小企業診断士の資格試験対策ですね。
ランニング
それから、23時くらいからランニング。3 km ちょっと走れました。