光合成の働きは、気孔、クロロフィル、Rubisco の状態に影響を受けます.
これらはさらに, 光, 温度, CO2 濃度, 根から吸収される水や窒素によって制御されます.
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気孔 sotomata
気孔とは, 葉の表皮細胞にある一対の孔辺細胞がつくる孔隙のことです.
植物は気孔を通して水分を蒸散させ, CO2 と O2 のガス交換を行なっています.
なお, 水が気孔から蒸散するとき, 気化熱としてはから熱を奪います. そのため, 気孔には葉の温度を調節する機能もあります.
光合成をおこなうには, 気孔から葉肉細胞のクロロプラストに CO2 が取り込まれなければなりません. 水分ストレス温度ストレスを受けてると, 気孔が閉じて CO2 が取り込めないため, 光があっても光合成は大きく抑制されます.
クロロフィル chlorophyll
高等植物にはクロロフィル a と b があります.
青色光 (400 nm 〜 500 nm) と赤色光 (600 〜 700 nm) を吸収しますが, 両者の中間にある緑色光 (500 〜 600 nm) はほとんど吸収しません.
そのため, 人口光を利用した植物工場では, クロロフィル吸収波長の光を効率的に照射するために, 青色や赤色 LED (light emission diod = 発光ダイオード) が利用されています.
クロロフィルはアミノ酸から合成されます. そのため, 肥料の三大要素の 1 つである窒素が不可欠です. 窒素が少ないと, クロロフィル量が少なくなり, 葉は黄緑色になってしまします. 窒素が多いと, クロロフィルの合成がすすんで濃緑色になります. つまり, 窒素栄養が適切であれば, 光をよく吸収できるのです.
クロロフィル量は, 目視や簡単な機器で測定できます. そのため, 窒素栄養を評価する指標としても使われています.
Rubisco
Rubisco は, リブロース -1,5- 二リン酸カルボキシラーゼ / オキシナーゼ (ribulose-1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase) というタンパク質の略称です.
葉のタンパク質の約 40 % を, Rubisco が占めていて, 葉のなかで最も多いタンパク質です. クロロフィルと同様に, 根からの窒素吸収量が少なくなると, 減少します.
光呼吸とは?
Rubisco は, カルボキシラーゼとして, RuBP に CO2 を結合させて ,3-PGA を作ります. しかし同時に, これに拮抗するようにオキシゲナーゼとしても働き, RuBP に O2 を結合させ, 2-ホスホグリコール酸をつくります. その後, 2-ホスホグリコール酸は, CO2 の放出を経て, 最終的に 3-PGA になります. これを光呼吸といいます.
光呼吸において, RuBP が O2 で酸化されると, このうち 25 パーセントの炭素が CO2 として失われます. しかし, 75 % の炭素は 3-PGA としてカルビン・ベンソン回路へ再び回収されます. このため, 水分ストレスなどで気候が閉じ, スクロプラスト中の CO2 濃度が低くなっても, Rubisco を経ないでカルビン・ベンソン回路を動かすことができます. カルビン・ベンソン回路が阻害されると, 過酸化水素が発生し, 光阻害を引き起こします.
このため, 光呼吸は光阻害を防ぐ役割があると考えられています.
カルボキシラーゼとオキシゲナーゼとしての活性
Rubisco の カルボキシラーゼとオキシゲナーゼとしての活性は, クロロプラスト内の CO2 と O2 の濃度比によって決定します. CO2 濃度が高まると, カルボキシラーゼとしての活性が高まり, CO2 固定が促進され, 光呼吸が抑えられます.